ACE COMBAT 5
The Unsung War
~15 years ago in Belka~

白髪混じりの若獅子

あとがき

 お……おわったー。長かったー。長かったよー。
 などと言いつつ話は1〜6月までの話で……小説無いの時間進行+一ヶ月かかって終わりましたが。
 色々考えている撃ちにネタが湧いて書き始めたこのお話。
 その間にZEROとか発表がきて……ええ、改稿決定ですよ改稿。
 作中のどんな矛盾もどんと来いな勢いで構えている所存であります。

・変われない世界
 この話を書くにあたって一番悩んだのは……不謹慎というか残酷というか、どうやってバルトさんに死んでいただくかでした。そして彼のキャラクターが出来上がるほどに本編冒頭のサンズの父への賛辞が皮肉であると言うことが浮き彫りになっていくのであります^^;
 何せ自殺という確定事項があるために彼には何処かでそうせざるを得ない心境、もしくは状況に陥ってもらわないといけなかったのですが結局前者は使えなくなりました。
 ちなみにその遍歴が以下の通り。

・核投下阻止出来なかった自分を責めて自殺(まだ普通に理想的軍人)
・家族の死をしって絶望(理想的父親)
・飛べなくなった事に絶望(空を愛していたよ)
・自白剤の副作用で良心の呵責がなくなりつつある自分に絶望(プライドを取った)
・……ステファン君に全てを託して彼の関与を吐かないために(決定)

 上四つが没になった理由はごくごく簡単。
 この人、絶望程度で死んでくれるほど柔ではありませんでした。
 最期の最後まで未来のため仲間のため子供達のために生き抜いた人になりました。

・変わる運命
 基本的に書きたいと思ったのは幼少時代のほのぼのとした暖かい思い出と義の見いだせない戦いへの苦悩、そしてその後に残された人々の思い。基本的に生き残った人達の話であったため友軍の死とか描写する機会はあまりありませんでした。確定事項の一つにバルトは列機の撃墜を許さなかったと言う事実もありましたので。
 その一方バルトにはバルトなりの過去が出来上がってしまったのは奇妙な誤算でしょうか。
 彼が自虐癖を発揮し始めた頃から彼の過去がどんどん濃くなってしまってます。
 その過去を乗り越えるとかそういった親子ドラマは実は完全排除の方向というのも自分の中では決定事項の一つ。あくまで書きたいものは別にあると。
 そして描写に悩んだシーンはもう一つ。
 ソル達と少佐(作中ではまだ中尉さんですが)のやりとりでしょうか。
 これが無くては15年後の英雄は生まれなかったわけですから。
 そして本編のサンズ兄さんは発言が矛盾てんこもりです。
 レジスタンス活動に片足突っ込んでた所か情報網まで把握しやがっています。
 絶対母親を恐れての言い訳だったと思います……つっても父親にゃばれてましたが。

 ある一点を通過するまで背景にこそ暗い影を落としていますが基本的に明るめ暖かめにしてあります。戦火の中にある安らぎ。それが無くては後の悲劇に繋がらないと言う、当人達にとってははた迷惑極まりない理由でしたが。

・変わる出会い
 ここからはキャラクター達にそれぞれ。
 ZEROのシナリオ次第では本編より活躍する人も出てくるかもしれません。

バルト・ローランド
・歴史に翻弄された眠れる獅子。
 この人は……えー、既に語ってますがあえて言うなら家族愛とかそう言うのを求めてたんだと思います。
 実父に見捨てられてその後自分の犯した罪(=罪悪感)を誰も裁いてくれない。
 叱ってくれる親と抱きしめてくれる親が欲しかったんじゃないかなーと。
 でもカリスマ性はかなりあった模様。
 彼が結婚して権力争いの舞台から退いた後も彼に賛同する人間はそれなりにやっていたようです。
 皆と笑いながら平和に生きていきたい。彼の思いや願いはそれだけだったんじゃないかなーと。
 ただ哀しいかな、時代はその為に戦うことを要求していたのだけど、失うことを恐れたといいますか。
 バルトに痛い目を見せられた連中も彼の強さを一部正確に把握していたんでしょう。
 人を率いる力。不安を拭い去る力。
 彼一人だけいても生かされない仲間が居て始めて発露するそれが本当の強さでしたから。
(勿論空戦における強さはそれとは別で)

 ……しっかり息子は二の鉄踏んでますね。
 10歳の頃に友人達が逝って、バルトはきっかけを作ったのに対してソルは泣けなかった事への罪悪感がトラウマになって。
 違うのはソルには憎しみの対象が居なかった事ぐらいですかね。
 むしろ逆に慕う対象を作っていたのが運命を変えたのかも。 

アロイス・C・オイゲン
・老兵は死なず、ただ時を待つ。
 この人の名前はぶっちゃけ遊びました。またメンバーの名前も頭文字を並べると「ACE」のアナグラムになっています。後ろでぼそぼそしていたり唯一の真面目人間……と言うことで微妙に影が薄かったような。
 一番最年長のこの人が生き残って15年後も大事なお仕事をやってくれるわけですが。
 改稿するときにはもうちょっと活躍させてやりたいようなこのままでいいような(笑)
・戦後はバーテンダーとして日々平穏に暮らしつつオーレッドの情報をステファンに流してました。
 ただ大統領からの要請があったときは直にやるとやばそうと踏んでサンズ経由だったと。
 ちなみに奥さんはもう亡くなっていましたが娘とは寄りを戻したようです。

エリク・クラウス
・運命は唐突に訪れる。
 バルトの幼なじみ。惚れた相手が極右政党に暗殺されている。色々と裏はあるはずだったんですが……。
 この人の場合はあっけなく、唐突に逝って貰うというのが決定事項でした。
 色々と思うことはありながらそれを全部持って逝ってしまうような、そんな人。
 レジスタンスと通じているのでその辺り浮き彫りにするといい案配に泥沼な話も書けそうですが(笑)

クルト・アルニム
・思いを受け継ぐ、若き翼
 前半は彼の視点中心で書かせて頂きました。AC5本編で言うとグリムのような立場でしょうか(笑)
 戦場の現実に怯えたり大人達にからかわれたり、思いも寄らぬ話を聞かされたり。
 一番何も知らない一番まっさらな人だと。
 レジスタンスと攣るんでいたサンズとは一悶着させてやりたかったですね。
 そこからより絆が強くなるような。
 そして年上の彼女持ち(笑)
・戦後はかつて自分達が属していた所と同じ名前の練習飛行場の教官を経てステファンの私兵舞台「グラウ・レーヴェ」(白髪混じりの獅子)の隊長機に収まった模様。
 バルト達の存在を忘れさせないために飛ぶ。それが今の彼の役割のようです。
 ちなみに2010年時点で奥さんとは結婚して10歳の子供がいたりします(笑)

ステファン・ジークベルト
・信じる者に誠実で有り続けた「不義の徒」
 実はどうしても5人目が必要だったと言うのが彼が登場した理由だったりします。
 オッドアイとか親は有力議員の息子なのに善玉とか遊び要素が多い多い。
 後半戦は彼に焦点が当てられています。誠実ではあっても決して勇敢では無かった人。
 それ故に吹っ切れたときの突っ走りぶりも凄いことになっていますが^^;
・戦後は軍役から引いて政治家への道を。あの核攻撃に絡んだ人間をしょっ引くと堂々宣言して紙面を飾ったりしてそうです。
 ちなみにこの人もちゃんと結婚して子供もいたりします。
 だからバルトの真実をソルに伝える決心がついたわけですが。
 大統領とはアレです。おやじさんと隊長みたいな。

 ちなみに5人目が必要だった理由は……。
BURNEY
LIBRA
ALBA
ZEPHYR
EAGLE
もうここまで書けば解ると思います(笑)

ティルラ・ローランド
サンズ・ローランド
デイズ・ローランド
ソル・ローランド
ディア・ローランド
・若獅子が守ろうとした人達
 前半ではほのぼの担当。後半ではこの話で一番割を食って貰う人達でもあります。
 一番焦点を当てたかったのはソルの失語症悪化の原因とそれに対するデイズの反応でしょうか。
 特にデイズとティルラさんはしっかり書きたかった。
 最期まで母親であろうとして結局流産した娘の事を話せずじまいだったティルラ。
 苦悩する弟を目の当たりにして彼を守ろうと決心するデイズ。
 本編開始時点での死亡が前提になっているのでその分しっかりと書いてやりたかったキャラでもあります。
 そして当時は父の出来なかった戦いに身を置こうとしたサンズと後に過去の亡霊と対峙することになるソル。
 途絶える未来と続く未来が解っているキャラ達。
 「何で15年後には死んでしまうの」と言って頂ければ書き手としては大勝利です。

ラウラ・ベルナー
・歴史に埋もれた女性
 えー……恐らくZEROにあわせた改稿でもこの人の事は多く語らないでしょう。
 何せホントにラズグリだったんじゃないの疑惑のある人ですから。
 ただエリクあたりが時折零してくれるといいかもしれません。

ノルト・リヒター(本名エアリス・ハルトマン)
・思わぬ縁
 前任だった兄が事故死して繰り上がりでなった管制官。所がそれは事故でなくて上層部の命令でステファンが手を下した事件で彼はその時抵抗されて片耳を失ってると……
意外なところで妙な設定が浮かんだキャラです。
 多分改稿したらこの人結構色々やってくれると思います。
 そらもうステファンと火花散らすだけ散らして最後にはゴールイン。
・……というわけで戦後ステファンと結婚した模様です。

 ちなみにお遊び感覚でAC5編で出てきた軍曹sの一人、アーク・ハルトマンの伯母さんになっていただきました。と言うわけで査問の時ソルの担当したのはステファンの甥です亡命仲間です。だけど本人達は気づきもしません。
 あと出てきたのはソル達が世話になったパイロットのホムラ・エーリッヒはフレア・エーリッヒの従兄。
 オイゲンを拾って看護に当たっていた衛生兵のオーシャン・シギベルトはマリン・シギベルトの兄。
 ベルカ人兵士(=オイゲン)にトドメを刺そうとした上官を射殺したリカルド・スティーブはゲイル・スティーブの父親と……。
 何やってんだとのツッコミお待ちしております(マテ)

カミラ・イェーガー
・未来に残す本の少しの悲しみ
 この子を書く時ほど緊張する時はありません。モデルは……痛い奴と言われそうですが昔の自分です。
 いじめ等れっこというあたりだけで私よりよっぽど強い子なのかもしれませんが^^;
 なのでメアリ・スーにならないようホントに気を遣いました。
 彼女に取って当時のソル達は私にとって居て欲しかった人達ですかね。
 守ってくれるナイト見たいな男の子が居たらそりゃ嬉しいですよ(オイ)
 その一方彼女に受け持って貰ったのは……戦争の悲劇ですかね。
 バルトの所では喪服姿で出てきて自分が撃ち漏らした誰かのせいなんじゃないかとバルトが心を痛めたり、あとは核攻撃で失った双子の友人の代表格になってもらったり(なのに彼女生き延びてますが)
 生存した理由は……彼等の脱出直前の話とZukunftの謎の人物(笑)との会話で察しが付くと思います。
 お互いに死んだと思っていたのが実は生きていて、互いに再会のタイミングを逃したまま……。
 全てが全てハッピーには終わらせないのがこの手の題材取り扱うゲームの宿命だと思います。

 ちなみに戦闘機乗りとしての適正はかなり高かったらしく、AC5のACESでは敵機バカスカ撃ち落としすぎてマークされたあげくにベイルアウトです。
 危なっかしいのでどん尻に置かれている模様。

 彼女の名字は本当はAC3ファンへのサービスぐらいに考えていたのにZEROでは同じ名字の敵エースが出てきます(笑)
 彼が彼女の父になるのか兄になるのか伯父になるのか従兄になるのかはZERO次第。
 そしてZEROのウスティオ陣に参加がほぼ決定しています。ZEROを待って下さい(笑)

 と言うわけで各単語の訳とかをのっけて締めに致しましょう。
 ZEROでベルカ戦争のさらなる事実が明らかになる日まで。

Verbannung『Banishing』「流刑地」
Rand『Edge』「崖っぷち」
平和にほのぼの。戦争の足跡はしますけれども。

Krieg『War』「戦争」
Stockung『Stagnation』「停滞」
Gerechtigkeit『Justice』「正義」
 開戦。それぞれの思うところ。
 守りたいと思う気持ちと変えたいと思う気持ちでしょうか。

Katzbalger俗語で喧嘩用。騎士剣の名として有名
Schutz『Gurdian』「保護者」
Wunsch『Hope』「希望」
Verzweiflung『Despair』「絶望」
 若獅子。遅すぎる目覚め編。
 同時に15年後の希望の始まり。

Tod『Death』「死」
Schmerz『Pain』「痛み」
Ritter『Knight』「騎士」
 彼の死と残された者達の苦悩と決意。

Zukunft『Future』「未来」
 生き延びた人達の話。
 15年後に希望を巻いた人達の話ものせて。

Blume『Flower』「花」
 タイトルに訳を付けるとしたら葬送花。
 大円団と見せかけて少し哀しい話も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すごいな……」
「うん。もうずっと昔なのに、まだ人は住める状態じゃ無いんだって」
「なんつーか……ここに人が住んでたんだよな。何人……何万人って……」
「珍しいわね。あんたが感傷的な話するなんて」
「……よく解らない。解らないんだけど……なんでだ。始めて来た土地のハズなのに、見ず知らずの場所のはずなのに」
「涙が止まらない?」
「違っ……て、エレン、何そっぽ向いてんだ」
「知らないわよ。あー、もうここにいると色々悪いんだわ!来る度きっと涙腺になんか来るのよ!」
「何だよお前だって泣いてんじゃねーか!!」
「うっさいわねーあんただって年甲斐もなくぼろぼろじゃない鏡見てみなさいよ!!」
「知らないよそんなの!なんでか……あーもういい、もう戻ろう!!」

「アルー、エレンー、おじさん達もうちょっとみんなと話してるからゆっくりしてろってー」
「嫌。帰る。叔父様のセスナ借りて帰る」
「いやそれはセレネ伯母さんが恐いからちょっと……」

 花を捧げる。

 時の止まった大地に、平和なる今と言う名の花を捧げる。

Fin