ACE COMBAT 04 shattered skies
The contrail which
drew a blue ribbon.
Mission9
バンカーショット作戦
俺の名はイーグル……つってもコールサインで失礼するよ。
ISAF空軍所属のパイロットだ。今現在、ロケット発射の作戦も終わり、コモナの基地で羽を伸ばしている。
今は軍の再編成まっただ中。ちょっと暇を持て余して散歩している途中だった。
……それが何で今背後から襲われて財布取られて地面に突っ伏してるのか誰か説明してください。
一体何が起こったのかは解らない。一つ解ることと言えば、訛のある声で「帰り賃に借りていく」みたいなことを言ってたと思う。オレだって軍人、ただのひったくり程度なら簡単に撃退……出来ると思っていたんだがなあ。一人で沿岸ふらついていたのが悪かったんだろうか。
そこに、聞き覚えのある、しかし俺には訳せない言葉が入ってきた。
『……大丈夫?』
「何でお前がいるんだよ……」
コールサイン、メビウス1。今最も戦果を挙げているパイロット……元エアショーパイロットだったり、未だに公用語に不慣れだったり色々突っ込みどころは多いがそれでもISAFのエースパイロットだ。
「財布」
「……取り返したのか?」
ここで言葉を詰まらせた。どうやら、それを表現する言葉を必死でたぐり寄せようとしているらしい。
いや、それ以上に何か言いにくそうな顔をしている。これは言葉が解らないと言うのとまた違うレベルだ。
だが、それを伝える術さえこいつは知らないらしい。
仕方がないと諦め、とりあえず財布の中身を確認する。カード、鍵、その他諸々は無事だった。だが……。
「おい……」
財布が本来中に蓄えておくべき物がない。つまり……中身だけ抜き取って……。
「追いかけたかお前?」
聞く分には本当に問題無いらしく肯定の意を示す。どうやら、捕まえ損ねたと言うことらしい。被害は本当に金だけか……だが。
「てめーが強いのは空の上だけかーっ!!」
『ちょ……チョークチョーク……』(じたばた)
ムカっ腹が立つ事には変わりないのでこいつで憂さ晴らしをしておく。
……多分ここまでぼろぼろにされてるエースもそうはいないよなあと思いつつ……。
「がっはっはっは!そりゃあ災難だったなあ!!」
帰った所でゼロ1に笑い飛ばされる。そりゃねえよなあ……。
「ま、人の不幸はなんとやらだがそれだけじゃ可哀想なんで……ほれ、お前宛の手紙だ」
「ひ、ひでえ……」
で、さっき俺がチョークスリーパーかましたメビウス1はと言うと……。
「おーし。エース様にもしっかり護身術たたき込まないとな」
ISAF最強の女整備士に追い回されていた……ノースポイントを出て体が温まったせいかここ最近ずっとあの調子だ……確かに護身術身に付くよなあ……つけないと体もたんし。
……そしてダチから……とは名ばかりの親父からの手紙。俺の親父は海軍で万年中尉。地上部隊だったか……もうそんなことも覚えてない。電話だと大喧嘩が目に見えているから手紙という手段を取ったんだろう。
内容は……やっぱり喧嘩を引き起こす内容っだった。
そんなに息子が空軍入りしてるのが嫌かねえ……まあ、この手紙のお陰で、しばらく不機嫌になったのはいわずもがな。
「ふっざけんな!!」
で、次にかかってきた電話を力一杯切ってしまう。声のでかさに周りの視線が集まる。親子喧嘩なんて見苦しいっちゃ見苦しいだろうよ。
「んだよメビウス……」
そこまででかい声を出した覚えが無いのにメビウス1の奴は呆然とこっち見てやがる……やっぱ俺こいつ嫌いだ。
何故親父がそこまでこだわったのか……俺が知る事は無かった。
それでもまだ鳴ってくる電話……またも親父……。
ぷっつん。
「てめーっ!!」
その後何を言ったのか全く覚えていない。
「レイピ……レイ4……耳離して」
「駄目。良い子は聞いちゃいけない言葉満載だから」
イーグルが何やら電話口に向かって叫んでいる言葉は……いわゆる放送禁止用語満載。
『いや言語圏違うし……』
「……耳離して欲しいのは多分ここぞとばかりに耳くすぐってるのがあれなんじゃないかなあ……」
そしてそれを見た整備士さんがつかつか歩み寄ってくる……怖い、なんでか知らないけど怖い。
もっとも、矛先が向いたのはメビウスで……また、卍固めを食らってます。
そして……そのまま次の任務が来た。
「あ、あの、先輩……」
「ん、どうしたの?」
僕に声をかけたのは以前河原で出会った若いパイロットだ。パイロットスーツを着込んで、今回の作戦が復帰戦になるらしい。
「何でイーグルさんはあんなに機嫌が悪いんでしょう……」
見れば……やはりメビウスにチョークスリーパーかけているイーグルの姿が……。
「おーい。一応エースなんだから首折らないようにね」
「い、良いんですかそれだけで」
僕だって何とかしたい所だが、生憎そんな能力は持ち合わせて無いと言うことで。
日没が近づく。今日の作戦は、大陸への上陸を支援すること。
上陸地点はストーンヘンジの射程外であることから決定したが、ここの地形は守りに秀でている。
あの驚異が、それを差し置いても凄まじいものだということなのだが。
「い、イーグル……出撃前……」
「……解ったよ」
メビウスに諭されてやっと解放。この状態で、大丈夫なのか不安が募る中僕等は飛ぶ。
イーグルにはイーグルの事情があるかもしれないが、僕も今回はヘマはできない。
「先輩?」
「ん、ああ、何でもないよ。そう言えば、君のコールサインは?」
「はい。オメガ13です!」
まだ不安の残る新人のカムバック戦に、汚点を残すわけにはいかないから。
「そう言えば先輩のコールサインなんでトーテムなんですか?」
「イメージは柱だったんだけどね……ポールってやると……その、本名になっちゃうんだよ」
僕等が来たとき、既に作戦は始まっていた。
「こちらクラウンビーチ、B部隊指揮官のベルツ中尉だ!ビーチの制空権が取れてない、話がちがうぞ!」
「こちら作戦本部、増援の航空機を送った。彼らが何とかする。海岸線を確保せよ」
「わかった、努力する。パイロットたちに大陸で会おうと伝えてくれ!以上!」
早速頼られてしまっている。ビーチは3カ所……それぞれが向かう事になるわけだけど。
「おい。俺はクラウンの方に行くからな」
「イーグル?……じゃ、レイ4、援護に回るわ」
「僕とオメガ13はカランダビーチへ」
「了解、メビウス1、ヘイルビーチへ」
僕等は、3手に分かれて飛ぶ。
「トーテム1、オメガ13の援護に回る。思いっきりやっていいよ」
「了解!」
ひっきりなしに聞こえてくる無線。その中で、僕等は対空火砲をはじめ進軍の障害を一つ一つ撃破していく。
「大丈夫、いける」
確かに、ひょっとしたら僕より上手いかもと思うとちょっと情けない。
「航空支援を要請する!砲撃はビーチの北からだ!」
「……仕方ない。僕が北の方を、君は地上部隊の援護を」
「はい!」
他の航空機の支援もあって、オメガ13の様子を気にとめながら無線に耳を傾ける余裕が僕にはあった。
「イーグル1一気撃墜。無茶してんじゃねーよこの万年中尉!」
「レオン……お前か。この親不孝ものが」
イーグルと……よりにもよってベルツ中尉とのやりとりが一際よく聞こえてきた。
「イーグル。親子喧嘩は生き残ってからやんな」
ゼロ1が釘を刺したら今度は黙りこくる……戦果への文句は今のところ無いようだけど……。
「レイ4、フォックス2。SAM破壊」
「イーグル1、フォックス2。一気撃墜」
息は合っているようだし……大丈夫なんだろうか。
「メビウス1、こっちはあらかた片づいた」
こっちは相変わらずだ……。
……改めてレーダーを見てみる。ああ、メビウスが行ったところ他の航空戦力も行ってるから実質イーブンなのか……。
とりあえず、ビーチは確保か……何とか……。
「……そっち片づいたんなら丁度いいや。イーグル1、こちらクラウンビーチ。敵航空機の接近確認。援護頼む」
「補給しようにも援護が来ないとダメなのよ。さっさとなさい!」
「持ちこたえてて!」
合流までかかる時間が惜しい。ここでしくじったら、戦いそのものが終わってしまう。
「8班、後方の斜面まで後退します」
「退避!退避!」
「下からじゃ全く手が出ない!」
早く、早く、早く、早く!!
「ち……後ろに2機くっついてきやがった」
「イーグル!」
こんな時に限ってなんで作戦区域のはじっこなんかにいたんだ自分は。
「オメガ13、フォックス2!」
「ナイスキル!レイ4、補給は……行かなくていいわね。援護に回るわ」
そして……その勢いのまま、敵援軍も無事撃墜した。
大陸侵攻への……足がかりを得たことになる。
「すべてのA−10を撃墜した!クラウンビーチはB部隊が確保した模様!」
そうなると、俄然兵士達からは歓声が上がる。激戦の疲れを物語るように、少し静かなものだったけど。
「了解、よくやった。作戦は成功だ。ベルツ中尉、パイロットたちに伝えることはあるか?」
「……」
返事が届くまでの間……そして……。
「こちら、コリンズ軍曹。B部隊の指揮を引き継ぎました。支援攻撃に感謝するとお伝えください」
これが意味することは、一つだった。
基地に戻っても、皆さっきのイーグルと中尉のやりとりを聞いていたのか、少し顔色は良くなかったように思える……当の本人を除いては。
「おいおい。何お前らしょげた顔してんだよ。特に通訳、お前には言ってなかったか?こんなの一度や二度じゃないってよ。ま、気合い入ってたのは、嘘じゃないけどな」
疲れたの一言を残して、部屋に戻って行ったけど……生憎、僕はメビウスと相部屋で隣の部屋だったから……聞こえちゃったんだよね。中の様子……。