ACE COMBAT 04 shattered skies
The contrail which drew a blue ribbon.

Mission4

空中回廊の遮断

 僕は今、あるものと睨めっこをしている。
 それは今後の僕の生活を左右しかねないものだ。
 片方を求めれば片方を失う。
 それは万物の摂理だ。
 そして……そのあるものとは……

 今までの撃墜レート。

「新しい機銃に回すか特殊兵装に回すか……」
 うわーっもーっどうしよーっ!
 今僕は猛烈にジレンマで苦しんでいるーっ!
 つーか誰だよ出来高制なんて導入しくさった奴はー!
 確かに有事の時はレート次第で並の給料バカらしくなるほど入るけどさー……。

ぎぃ……ばたん。

 ん?ぎぃ?あ、部屋のドアが……誰かいたのか外を見ると……
 早足で去っていくメビウス1の姿が……やべ、今の姿見られて見なかったことにされて……。
 ん……そうだ。
「待って〜メビウス〜」
「…………………?」
 部隊一の高所得者がどれほどのものかちょっと興味が湧いたり。
「撃墜レートどうなってる?」

 そしたら彼が何を見せたと思う?
「……だめ?」
 上目遣いに見上げた僕の視界に、撃墜レート0の文字が……。
「……一体どしたの……」
『一番性能良い奴……
F/A-22Aだっけ。それの使用許可貰ったら、撃墜レート0に』
 よ、よりによって今ISAFにある機体で一番高性能な奴ですかい。
 ……スケール違い過ぎるよそれは……機銃で精一杯の僕って……。

『今からゼロに奢らせに行くけど、来る?』
「行く!」
「私も!」
「俺も〜♪」
「てめーら俺を何だと思ってやがるーっ!!」
 おこぼれに預かろうとしたレイピア6にイーグル1に、ついでに当事者のゼロ1まで隠れてた……。

『とりあえず、家事一切のバイト代がまだ』
「……てめーそう言うのを恩を仇で返すってんだぞ……」
 うーん……強い。結局その晩奢って貰っちゃった。
 あまりをタッパに忘れずに。

 そんなこんなで今日の任務に当たる訳なんだけど……。
「メビウス……それいくらしたの……?」
 とりあえず聞いたことを後悔するような値段だったとだけ……。
 訓練でも新しい機銃にはちゃんと慣れたけど、お互いこれが初導入。

「まもなく輸送機が見える。近くにいる電子戦機(E767)を撃墜すれば、レーダーはクリアになるはずだ。幸運を祈る!」
 本日の任務。どうも向こうが無敵艦隊として名高いエイギル艦隊を中心とした侵攻部隊の編成を進めているらしい。
 これが出航すればISAFの敗北は決定。その妨害として空輸部隊をおとすと言うことだ。
 ただし、向こうもバカじゃない。電子戦機によるジャミングでこちらのレーダーは役に立たなくなっているとか……。

「メビウス〜大丈夫か〜?」
 イーグルがいやに嬉しそう。自分が有利というのがそんなにいいかね。
 ゼロ1が指摘していたとおりメビウスは飛行技術はいいけど機銃が不得手。僕は逆なんだけどね。
 後ろのミサイル回避しつつ前を撃ち落とすっていうのはミサイルの追尾性が前提だし。
『……やってみるさ』
 多分、コックピットが覗けたなら、彼は笑っていたのだろうか……?

『……敵機確認』
 ジャミングで映りの悪いレーダーに数機の護衛機と空輸機が見えた。
「条件が同じなら腕はこっちが上だ!」
 いや、護衛機が迎撃体勢を取ったのが視認できた。
「敵にはこっち見えてるよ」

「とにかく電子戦機を撃ち落とすのが先決ってわけね。戦闘開始!」

 いつもより殲滅速度が遅くなっていたのは仕方のない事だった。
 ミサイル無し何て言うのは訓練ではよくあるけど実戦ではなかなか無い。
「ちょろちょろ逃げるんじゃねぇっ!!」
「メビウス1、ミサイルミス」
 ただ……今日という日は……ひょっとしたら……。

「トーテム1一機撃墜!!」
 僕の為にあるのかもしれない。
 新しく購入した機銃、実は連射性能よりも一発の威力に重きを置く類だったわけで……。
 やはり条件は敵も同じだったらしい。お互いミサイル無しの格闘戦になっている。
「メビウス1、電子戦機発見」
 相変わらず飛行技術に関してメビウスはずば抜けている。
 二機後ろにひっさげつつ撃ち落とすつもりだ。
「メビウス、一機僕が撃ち落とす。電子戦機よろしく」

 機銃の雨をかいくぐりながらは辛いと思ったんだけど……。
「レーダーが一部クリアになった」
 撃ち落としちゃったよ……二機の銃弾を回避しつつ……いや、戦闘機の先端はずっと電子戦機を見据えたままだった。
「トーテム1、二機撃墜」
『早さに慣れるまでがきついか……』
 職業柄なのかもね。機体と腕に妥協しないっていうのは。

「トーテム1!ミサイルだ!!」
 え、あ、やばっ。
 レーダーがクリアになった途端……いきなり僕にミサイルが……。
「レイピア12一機撃墜。良かったですね〜敵から要注意人物のお墨付き頂けて」
 まあ、確かに誉れだけどね……でも、後にメビウス1が受けることになる異名に比べれば……。

「レイピア6、輸送機一機撃墜」
「トーテム1、電子戦機撃墜」
「こちらゼロ……スカイアイ。レーダークリア。各機画面を確認しろ」
 これで、お互い条件も揃ったわけだけど……。
「あー、こちらレイピア12。後ろの誰か何とかしてくれませんかねぇ?」
 相手も条件が同じ……そして僕も……。
「こっちも何とかしてーっ!」
 皮肉なことに、僕は自分で自分の活躍の場を潰してしまったような……。
 ジャミングの中輸送機落とせば良かった……あと一機でエースなのに。

 敵機に追い回される僕の前に輸送機とメビウス1と……もう一機敵機が。
 やはりゼロ1に指摘されていたのか……機銃で落とすつもりだ。
 後ろに一機つれたまま……。
「イーグル1一機撃墜。トーテム、奴にばっかエース独占させんな!!」
「OK!」

 と、言うわけで、輸送機はメビウスが、彼の後に付いていた護衛機は僕が撃ち落とした。

「輸送機の撃墜を確認した。レーダーなしでよくやった。トーテム1、今日のエースは、名実共にお前だ。今夜は俺が奢って……あ、わり、メビ……」
『帰るまでが任務です』
 あっさり釘を刺されるゼロ1。
 うーん。僕とメビウスの買い物の成果を知る良い機会だったというか……。

 基地へ帰った僕等を出迎えたのは……。
「おっかえりぃ〜♪」
 嫌に機嫌のいい整備士のお姉さんだった。
「早く整備させろ〜♪」

 何故だ……何故そんなにご機嫌なんだ……。
 その姿はメビウスを初めとした全パイロットの目に恐怖を映し込ませた……。
「せっいび、せっいび〜♪」
 スキップしながら……お願いだからちゃんと整……あ。

 やばい……今見つけたんだけど……。
「……今日の卍固めはトーテム君ですかねぇ」
「可哀想に……」
 ああ……同僚達からの哀れみの声が聞こえてくる……。
 土手っ腹に穴が空いてた僕の戦闘機。やばい。やばすぎる……。

「しょーがねぇなぁ。ほい修理費見積書〜♪」
 ちゃっかり高額請求はいつもの事何だけどね……ちなみにこれも撃墜レートから引かれます。
「はは……う……運がいいのかな……今日は……」
 有利な条件、戦果、そして今……次回辺り撃ち落とされそうで怖いな……。

 そんな彼女が、メビウスを発見するなり……。
「待ってたわ〜♪」
 黄色い声出してるよ……メビウスは……この空より真っ青だった。

 幸い、彼女のお目当てはメビウス1じゃなくって……。
「ん〜♪これをいじくれる日が来るなんて〜♪ラプタンハァハァ*´∀`)」
『い、いじくられたら困……』
 抗議しようとするメビウス……強いね。強いけど……
「あん?」
 今逆らうのは無理っぽいね……。
「にしてもいいわぁ♪」
 ああ……壊れてる壊れてる。

 そして延々とメビウスのF/A-22A……通称ラプターを嘗めるように整備するお姉さんだったけど……。
「今日に限って無傷か……」
 傷があったら……どうなっていたのかを考えると怖すぎだった。

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