ACE COMBAT 04 shattered skies
The contrail which
drew a blue ribbon.
Mission2
喉元の刃
「イーグル1撃墜〜降りてこ〜い」
「マジか〜……俺の時より判定甘くないっすかぁ?」
初陣から10日ほど。あれから出撃はなく、訓練を重ねながら次に備える生活が始まった。
今は訓練飛行中。今日もメビウス1の一人勝ちだ。
え、僕?真っ先に撃墜判定貰って暇してたから雪だるま作りながら観戦中。
「バカ言うな。俺は身内ににゃ厳しいんだ」
スカイアイ……訓練中はみんなゼロ1って呼んでる。
彼の指導は確かに厳しい。僕もこれ落とせるだろって思ったら回避判定。
あえて実戦より弾が当たりづらい事を想定しているって聞いた。
『……こき使うのとは別だと思う……』
メビウス1も10日近く経つと環境に慣れてきたのか喋るようになってきた。
公用語の方は相変わらずだけど。ついでに無口さん特有のぽつぽつ口調も。
「ゼロ1聞いて良いですか?」
落ち零れにだって得は回ってくる。
誰より先に降りたから、誰より長くゼロ1の指導が聞ける。もちろんプライベートなことも。
「彼ってこれまで指導したパイロットの中ではどんなですか?」
単刀直入に彼の強さはあなたの指導ではと聞いても良かったんだけど……
それだと僕は何で今こうして雪遊びしているのか解らなくなるのでやめた。
「そうだな……本職が本職だけに飛行技術は俺さえしのぐ」
ゼロ1の口から、周りが聞けばどよめき立つようなセリフが飛び出した。
「本職って……なんすか?」
「ああ、お前仲良さそうだから知ってると思った。曲芸飛行士だよ。ほれ」
そう言って新聞の切り抜きを見せて貰った。
曲芸飛行の大会最年少優勝者……あれ?名前の部分がきれてるや。
「あとは根が冷めてる……つまり冷静だから心理戦の対応も強い。ただな……無駄撃ちが半端じゃ無いんだよあいつ……いや補足出来るからいいんだけどよ」
が、身内に厳しいのは確からしい。欠点もしっかり指摘してきた。
「射撃技術だけならお前の方が上……と言うかそっちだけはトップだな。補足さえすりゃ百発百中じゃね?」
身内に厳しく、他人に甘いのだろうか……思わぬゼロ1の言葉に耳を疑った。
「お前と奴足して2で……やめた。割ったら個性も決め手も無い凡人だ」
「そう言えば……何故彼は空軍に?」
ふと思いだした。初陣の日、自分が撃墜した相手に追悼の意を捧げる彼を……。
「その紙切れ見たら、解るかもしれんぞ」
そんな日々が続いて僕等に2度目の出撃命令が出た。
リグリー飛行場にエルジアの大規模な爆撃機編隊が集結してる。
ノースポイント爆撃阻止のため駐機中の爆撃機の破壊が目的。
「スクランブル機に気をつけろよ、トーテム1」
これまでの訓練中ずっと2位に付けていたイーグルが意地悪な事を言う。
「了解……って、何で僕に振るの!?」
それに応えたのはレイピア12。
「我らがエースの通訳は死守するのでご安心を」
「通訳?」
「文字通りだイーグル1。無口なのは公用語が不得手だからだろ」
うわ。こいつ僕等の会話ちゃっかり聞いてたのか。
いや、母国語で話してる時もメビウス無口には違いないんだけど。
「こちらレイピア6。彼まだ軍経験浅かったのよね。今後マスターしないと困るから、手取り足取り教えて上げるって言ってくれる?トーテム1」
『……良かったねメビウス1。アイドルからのご指名だよ』
「聞く分には全く問題無いから公用語で構わない」
……多分解らないだろうと思って言いたい放題言っていた連中が一気に押し黙った。
文体が硬い所を見ると教わった文章そのまま言っているようだ。
「リグリー飛行場まで30マイル。送電線にそって北へ飛べ。
爆撃機はお昼寝中だ。一網打尽にしろ!」
スカイアイとしてのゼロ1の元、公用語で統一された複数の「了解」がハモる。
「ちなみに、迂闊に機体を傷つけるとこわーい整備のお姉さんが待ってるからそのつもりで」
う……こないだのあの人かぁ……確かに怖いかもしれない。
「余力があったら変電所も叩いておけよ」
「メビウス1、変電所上空を通過」
やっぱり口火を切ったのはメビウス1。
太陽発電のパネルが上空スレスレを高速で飛んだときの衝撃……俗に言うソニックブームで一部吹き飛んだ。
『やっぱだめか』
そう言うとトドメを刺してから目的地へ向かっていく。
そこへ傍受された敵の通信が入ってきた。流石に目立っちゃったかねぇ。
「こちらリグリー飛行場。敵機が接近中。スクランブル!」
「爆撃機を移動させろ!」
違った。ちゃっかり爆撃機破壊に入ってやがんの。
「相変わらず飛ばすねぇ〜我々も手柄上げないとまた一人勝ちされますよ」
レイピア12の言葉と共に僕等も散会した。
「これは演習ではない。繰り返す。これは演習ではない。ただちに迎撃せよ」
まあ普通焦るよね。さっそくスクランブル機のお出ましか……。
「メビウス1。無茶するなよ」
当然、間近にいた彼に結構な数来るのは当然なんだけど……。
今回の作戦。上から下を攻撃する分には楽なものではあった。
対空砲台も動かないから僕にはいい的だったしね。
「じゃ、地上はメビウスとトーテムに任せて、俺はエースの座を頂くかな」
「さすがよね〜二機も後ろにぶら下げてよくかわしきれるわ」
そう。メビウスの何がずば抜けているって回避技術。
さっき何て敵のミサイルが地上施設にぶち当たったんだから。
ちなみにそんなミスをするほど彼しか目に入らなかった奴、僕が落としたんだ。
訓練も含めて始めて落とした戦闘機になる。
「スカイアイへ、こちら攻撃部隊。任務完了、帰還する」
「こちらリグリー、爆撃機は全滅!繰り返す、爆撃機は全滅!」
今回、奇襲に近い事もあって前回以上に一方的なものになった。
「こちらリグリー飛行場、頭の上の敵機を何とかしてくれ!」
「虎の子の爆撃機が全滅するぞ!」
「爆撃機、急いでタキシングを開始しろ。固まっているとやられるぞ」
「何てこった!離陸した機も着陸できんぞ!」
これだけ傍受内容並べればどういう状況か解るよね。
ちなみにこれ、全部メビウス1の通った後だったりすんだから……。
今回のエースはイーグル1とメビウス1が同数。
だけど敵エースと思しき戦闘機を落としたことや地上攻撃のことも含めメビウスに軍配が上がった。
やっぱり身内ひいきだって言うイーグルのぼやきが聞こえた。
ちなみに、僕は2機。人の後ろにくっついてものとはいえ、やっとまともな戦果が挙がったって感じだ。
「メビウス1……地上施設に何か恨みでもあるのか?」
「戦争兵器に恨みのない人間がこのご時勢何人いますか」
レイピア12とイーグル1の掛け合い。レイピア12の言うことも最もだろう。
訓練中にゼロ1に見せて貰った新聞の切り抜き。
最年少優勝者を出した大会の会場には今、ストーンヘンジが佇んでいる……。
余談だけど、整備のお姉さんの雷は、ソニックブームで叩き割った太陽発電のパネルで機体に傷が付いたと言うことで、メビウス1に落ちる事と相成りました。
「てっめーそれでも飛行機乗りか!?ああっ!?何とか言ってみろぉっ!!」
……卍固めされた状態で何とか言えればいいんだけどね……。