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PHANTASYSTAR
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欠けない月
The meaning of the change&The meaning of the Invariable
The Sun which wanes

それさえあれば、世の中大概のことは丸く収まってしまう

時にそれさえあれば無茶だって出来てしまう

ただし

それに代えることだけは絶対に許されないものだってある

忘れてはならない

それはあくまでも手段であって目的ではないということを

ただ

感謝の気持ちを

どう形にすればよいか迷ったときにもそれは使われる

彼等はもちろんそれをうけるだろう

それの為に動いたわけでは無いにしろだ

CACE of ALL
財布の紐
The Value of Money.

「まあ、大体の収支はこんなところですか?
 目の前の、自分にもこのぐらいの年頃の子がいてもおかしくないような小ささのHUcaseal。
 彼女に突き出された赤字のメモにHUmarギゼルは沈黙せざるを得なかった。
「いや……だってさぁ」
「こんな生活続けてたらお金無くなって貧乏なっちゃうですよ?」
「いぎっ」
 言い訳しようとしていたところを更にこう畳みかけられては言い返せない。
 相手の外見が幼子であったことがそれにさらなる拍車をかけた。
「無駄遣いしないって約束するですか?」
「うう……解った……解ったよぉ……とほほぉ……」
 そうでなくとも演算能力の高いアンドロイド相手に費用対効率の何たるかを論じようとする時点で無謀だったのだ。

「助かったよ。お嬢ちゃんやるねぇ」
 夫ギゼルの説得成功の報を受けて、その妻……通称秋子おばさんはほくほく顔であった。
「えへへ。テトりんもお世話なってる人が居るから無駄遣いできないですよ」
 つい最近高い買い物もしてしまったし……一万メセタで取り付けた猫耳のようなヘッドパーツを軽く掻くテト。
 そこに……そのテトが世話になっている人物がやってきた。

「アーサーさんも依頼受けてたですか?」
「うん。テトの方はどうだった?」
「ばっちぐーです」
 依頼はただの浪費家の説得。それもテトにしてみればかなり有利な条件の。
 報酬だって300メセタと小遣いと言って良いような額。
 だが初めて単独でこなしたという事が彼女には大事だったのだ。

「じゃあ、僕の方も報酬受け取って帰りますか」
 で……アーサーの受けてきた依頼はと言うと……。
「えーと。ブラックマーケット掃討の報奨金と押収品。総額30万メセタご確認くださーい」
「あらぁっ」
 桁が違った……文字通り1000倍ほど。
「……お嬢ちゃん……もうちょっと贅沢言っても罰は当たらないかもね……」

 テトが元々は父のマグだったと言うことで、彼女はアーサーと暮らすことになった。
 三人ぐらいが暮らせるスペースと財力のあるアーサーにはさしたる負担では無いのだが……。
「また随分集めたんだね……」
 元々一人には広すぎる部屋とはいえ……。
「えへへ。ついついですぅ……」
 拾ってきたレアアイテムやら希少品をインテリア代わりに部屋にぶちまけるのはどうかと思った。
 こうして4つあるアーサー宅の部屋のうち一つはおもちゃ箱をひっくり返したと言うよりおもちゃ箱そのもののようになってしまっていた。

「そう言えばヘッドパーツだけじゃなくてマグも変えたんだね」
 テトの肩に元は彼女だったカバンダは無く、代わりに尻尾の様なマグ……パンサーテイルがふらふら揺れている。
 彼女がヘッドパーツに猫耳を選んだのはそれに合わせたからなのかもしれない。
「テトりんだったマグ覚えてるですか?あれの……エモ……あれ?とりあえずAI修復が上手くいったので、マグ細胞と一緒に組み込んで来たのですよ。ちょっとずつ細かく色々思い出せる言ってました。お父さんの部屋も思い出せるといいです」
 そうだねと言ってテトの頭を撫でるアーサー・スターリングのもう一方の手は、このおもちゃ箱をどうしてくれようかと頭を抱えていた。

 有り余る財を得る者もいると思えば、日々の生活だってままならない者もいる。

 今、母メローペに奢って貰った食事を嬉しそうに食べるシフォナ・フェイゼルがそうであろう。
「まったくアンタも良く頑張るわ……」
「もぐもぐもぐ……だって爺蹴倒しておいて……むしゃむしゃ……家帰る訳いかないじゃん」
 軍を辞める。それは代々軍人として伝わってきたフェイゼル家そのものを辞めるに等しい。
 腐敗の現状も知っている母は、娘を止めようとは思わなかった。
 が、一番の権力者であった祖父がそれを許さず、結局大喧嘩の末、分かり合うことなくシフォナは祖父を置いてパイオニア2に乗り込んだわけだが。

 そんな彼女がまず改めなければならなかったのが生活習慣であった。
 裕福な家に……それも帰ることこそ少なかったものの親元で暮らしてきたシフォナ。
 彼女にとって誰の後ろ盾も無い日常生活そのものが未知の領域であったのだから。
 一時期は野戦の訓練がそのまま生かされたという言うのだからその実状推して測るべし。

「はいはい食べながら喋らない」
「だってお母さんマシンガントークなんだもん」
 娘の自由意志を尊重する母も、しつけには厳しかった。
「お黙り」
「痛ーっ!!ヒールで踏むこと……ってうわっ!!」
 ヒールで敵を踏みつけ蹴倒すその様は若獅子の名を欲しいままにした夫をも恐れさせた、メローペ・フェイゼルのそれであった。
「娘足蹴にすること無いでしょーっ!」
「ほほほ。お母さんしつけには厳しくってよ!!」
 店の一角で、被害総額一万メセタに登る親子対決が始まった……こうしてシフォナの赤字は増えていく……。

 切りつめてもひもじい思いをする者もいれば、財力はあっても浪費に頭を悩ませる者もいる。

「マスター……大体今月はこんな所です」
 生真面目なリセルと脳天気なリグ。正反対の二人を束ねる男がそうであった。
 彼の手腕はこの二人を束ねている。彼の両腕は今頭を抱えていた。
「リグ……お前このエーテルは一体何に使ってるんだ?」
 リグは、今現在ある賭けに負けた為、命令無くアーサーに手を出すことを完全に禁止されている。
「ん〜兄ちゃんもこの船乗ってるらしくってね〜最近そっち良く行くんだー♪」
「……ならいいか」
「良いんですかっ!?」
 エーテル……いわゆる眠り薬を持って何をするのかを考えると、リセルの対応が一般的であろう。
 が、ここはブラックペーパー。一般、普通、そんな言葉は意味を失う場所である。

「効きもしないのに使われるよりはよっぽどマシだ」
「効かない……とは?」
「アイツの母親の職業柄な、一部の薬物受けんぞ」
「でもちゃんと気絶したよ〜」
「お前、塗れ布巾鼻と口にくくりつけてやろうか?」
 地下組織では、今日も平和に時が過ぎていく。

 つい最近保護者と被保護者の関係になった二人もいれば、少し前にその関係を薄れさせた二人もいる。

 ロナリー・エンパイアとルウェイン・アークネットがそうであろう。
「珍しいね。仕事の話で呼ぶなんて。それで来れたら、なんてさ」
「まあな。ちぃとした趣向見たいなもんやからね」
「ふーん」
 まるで買い物に行く親子のような様子で総督府のオフィスを歩く二人が向かった先に、ロナリーの依頼人がいた。

「よ。アイリーン久しぶりやね」
「お久しぶりです。ロナリーさん」
「あれ、ひょっとして秘書さん?」
 そう。その依頼人とは、タイレル総督の秘書、アイリーン・セパであった。
 リコの友人であった彼女は、同じようにリコの友人であるロナリーとも交流があった。
 その縁と言うのは、二人を興味深げに見つめているルウェインによって生まれたものなのであるが。

「ありゃ?ひょっとしてルウェインに既に会うてた?」
「ええ。洞窟発見の時に、報告に一度だけね」
「なんや。じゃあここにあのおっさんおらんでもええがな」
「?」
 ルウェインにはおっさん、と言うのがタイレル総督であることまでは解るのだが、何故わざわざ引き合わせようとする養母の意図が分からないでいた。

「ま、アンタの依頼は見当付くわな。安心せい。リコの捜索なら言われんでもやるで。うちの用件も片づいたからな」
「じゃあアーサー君は無事に見つかったんですね。良かった」
 その言葉に、ワザとらしさがあることを見抜けない養母ではない。
「白々しいで。知っとった癖に。でなきゃあんなセキュリティーLV高い場所住めんやろ」
「え、あ、解りますか?あの……あんまり必死にお願いされてしまったもので……」

 普段温厚で大人しく、そして従順だった少年にはある意味において、我が侭のパスポートのようなものを握っていたと言うことなのであろう。
 それを、本人の意図は別として上手く利用した甥っ子の側面に、ロナリーはかつて自分が慕っていた姉の夫をつい重ねてしまう。

 ……光夜……待ってて。貴方も私が見つける……絶対にね……

「はは……まあ、子を思う親の気持ちは一応分かるつもりや。あのおっさんの頭白くなるまでには見つけたる」
 子を思う親。この辺でルウェインにも大体の見当が付いた。
 叔母の趣向も、リコと総督が親子だと言うことも。
「……そう言うことか。じゃあ私はもうここに居なくて良いわね」
「たはは……そうなるな。すまんすまん。行ってええよ」
 自由時間を与えられた子供のようにぱたぱたと走るルウェインが部屋をでる間際に言った。
「私もリコ探しなら依頼受けるまでも無くやるけどねー」

 そんな後ろ姿を、アイリーンとロナリーは微笑ましく見つめていた。
「リコが助けた子が、今彼女の後を追いかけてハンターズになった。感慨深いと思わんか?」
 それを、リコの父タイレルが見たらどんな顔をするか。ロナリーはそれが見たかったのだ。
「そうですね。総督も時々孫の顔が見たいだなんて言ってましたし」
「言うておくけどアーサーは駄目やで?」
「解ってますって」

「それと、報酬は一応もろうておくからな?最近出費厳しいねん」
 その言葉を聞いて、微笑むだけだったアイリーンがとうとう吹き出してしまった。
「はいはい。出来うる限りのお礼を用意しておくわ」
「さすが総督秘書にして調査員元締めは言うことが違う」
 閑静なはずだったオフィスに、豪快な笑い声が響いていた。

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