ACE COMBAT Zero
The Belkan War
The fate neatly reward it. We only remember the nonpayment we of.
...The UnReward War...

Mission9-Mission

 すれ違いにも程がありますよねー。
 同感だ。本気で覚悟決めてたんだがな。
 あれぇ?恐かったりしましたかぁー?
 ……直に会ったことの無い奴にはわからんだろうなあ……。

 ブリーフィングルームが騒がしい。
「なんかもう、なりふり構ってられなというか……」
「こっちも相手の事は言えないがな」
 次のミッションは当然の如く例の兵器、エクスキャリバー攻撃攻撃作戦だった。
 そのスペックに改めてぞっとさせられる。
 考えが及ばなかったと言えばそれまでだったが、アレはこのヴァレーすら射程に収められる。
「不幸中の幸いと言うべきか、反射衛星の移動速度は大したこと無いから今は安全と思っていい」
 戦術衛星の全滅、同時に宇宙基地襲撃機の帰還援護にバカスカ撃たれたらしい。
 お陰で、ヴァレーを捉えるまでに猶予があると思っていいんだが。
「正直地上部隊を送り込める場所でも無いが、爆撃機をよこしても切り捨て御免。そこで……」
 無茶と言えば無茶な作戦。大軍と少数精鋭の二段構え。
 どちらかが囮でどちらかが本命。数に者を言わせてるからどっちでもいいと来た。
「少数精鋭っつーか……」
「……本気で叩かないとヤバイのは解るけどな……」
 機体の真下に並ぶ爆弾は正に鈴なりとでも言うべきか。
 増槽に描いてあるドクロマークは「コイツもぶつけて来い」と言う意志表示に他ならない。
 そして少数は少数でもヴァレーから飛ぶのはたったの5機。
 それも……。
「クロウ隊の3番機、PJです。よろしくお願いします!!」
 ボンボンとか駆け出し臭さ満載なんだが。
 イーグルアイが選んだんなら少しは信用していいんだろうが。
「ま、それを言ったら私達も大差無い気がしますが」
「こっちは10年飛んでるんだがな」
「へ?」
「あの国に常識を求めるなって事だ」
 テストパイロット選びに輸送機に曲芸させる国だし。
「所でPJ、彼女に花束買ってやらなくていいのかー?」
「根性の別れになっちまうかもしんねーぞー?」
「え、縁起でも無い事言わないでくださいよ!!ねぇ!」
 そう言って相棒に縋るような視線を送るPJ。
「……ふーん。彼女、ですかぁー。へぇー……」
「相棒、やるなら俺の見えない所で頼む」
 のっけから地雷踏みやがった。

 子供達の見送りで戦場へ飛ぶ。それが当たり前になってる。
「敵の秘密兵器ぶち壊しに行くんだよね!」
「エクスキャリバーって言うんだよね?」
「抜いたら王様?」
 どこで調べてきたんだよ、その秘密兵器のコードネーム。
『……王?』
 長男の疑問系らしい言葉が相棒に向く。
『風格ある?』
『無い』
 よく解らないがさっきまでのだらけた態度が一転凹む相棒。
『妖精さーん。みんながいぢめますー』
「あーあー聞こえなーい」
 俺その言葉解らないの知ってるだろうが。
「で、何時まで遊んでるつもりですか?」
 ほーれ早く行かないと恐い副官が睨んでるぞと。
 まだ拗ねてる相棒をタラップに押しつけて俺も愛機の中へ。

「イーグルアイよりガルム隊。そろそろ別働隊が給油機と一緒に合流するはずだ。給油を終え次第攻撃に移れ」
「了解〜と、給油機を目視で確認。合流〜」
 いるいる。先行隊と連合軍からのお情け程度の援軍が。
「たった数機の戦闘機が、心強い援軍ねえ……」
「つれないねえ。君らが噂の猟犬だろう?こちらユーク第132戦闘飛行隊ヴィスナ。君達と飛べて光栄だよ」
 給油中聞こえてきた無線の訛りはユークのもの。
 さすがヴァレーが実権を握るとよく解ってらっしゃるようで、オーシア連中全機余所行かされたらしい。
 わざわざユークから海を越えてご苦労なことだ。
「あれー?オーシアとは冷戦中じゃありませんでしたっけぇ?」
「そのはずなんだがねえ。まったく、困ったもんだ」
「……可哀想に」
 その声は、本心からの哀れみだった。

 先日戦場となったシェーン平原を避けるように抜ける。
 広がるタウブルグの森の中央に、保護区には似つかわしくないその姿が朧ながら見えてきた。
「でかー……」
「そうでなくては潰しがいがないさ」
 確かに大地に突き刺さった剣を思わせる。引っこ抜くには少々デカイ気もするがな。

 どうしました、妖精さん?
 いや、ちょっとな……
 結構、羨ましかったんじゃないですか?彼のこと。
 そうかも、しれないな。

 あーあー。オーシアの連中、なんでまたわざわざ冷戦中の連中まで呼び寄せてんですかねえ。
 仲取り持つためにベルカは尊い犠牲ということですか。
 と、なんかレーダーに赤い筋が一本……。
「敵地に接近、危険空域内だ!全機ブレイク!ブレイク!」
「ぇー」
 さっき給油終わらせたばっかりなんですけどねえー……と?
 愚痴る間も無く真横を青白い閃光が掠めて、何かが弾け飛んだ。
「うわー……」
 やはりというか案の定というか……給油機は哀れ空の藻屑。
 脱出者が居ないところを見ると、これは真正面からやられましたかねえ……。
「最初の生贄って奴ですか」
「ちょっとは気を引き締めろ、行くぞ!」
「まず周囲のジャミング施設を叩け、エクスキャリバーを丸裸にしろ!」
「台座の石から削り取りますか」
「そんな方法がまかり通ってたまるか」
「はーい」
 力を見せつけるべき民のいない前で馬鹿正直に引っこ抜けと?
「ガルム1、敵ジャミング施設が目の前だ」
 ……と、今は科学の時代でしたか。

「こちらオーカ・ニェーバ。タウブルグで砲撃を確認した。こっちでは思う存分飛べるぞ」
「よっしゃー大当たりー!と、敵機視認。ファントム……まさかなあ?」
「キラービーといい現役だったら今幾つ?」
「こちらエッジ。フッケバインもたまに出てくる。人員不足は本当らしいな」
「帰ったら愛しいハニーが待ってんだ。墜ちれるかよ!!」

「ガルム1投下。ジャミング施設一個目破壊」
「ヘリ一気撃墜……相棒、来るぞ!」
 真横を掠める光の筋。進路を変えざるをえない。
 自由に飛ばせてもらえないっていうのは……。
「いっそバレルロールで抜けてしまいますか?」
「却下!!」
 即答。
 あーもう。そんなことしてる間にまたアラートが……って、あれ?
「ちょ、これどこから!?」
 さっきの爆弾で周辺のSAMも潰したはずでレーダーにもなんも映って無いんですけどー?
「スティンガーだ!迂闊に低空飛ぶとやられ……来た!」
 あはははははー……妖精さんも似たような……またレーザー来るしー!
 丁度良いから上空退避。地上を派手に吹き飛ばす勢いでSAM歩兵もやっちゃってくれると……
 あー、またロックきましたよもー。
 何処まで飛んでもアラートが五月蠅いー。
「妖精さんこれ殺っちゃっていいですか!?」
「今回はやってい……!……くそっ、また来やがった!」
 ミサイルの発射確認、レーザー発射からどのくらいでしたかねえ?
 レーダーの赤いライン。少ーし動いているようで、熱心なことです。
 ギリギリまで低く、低く、木の先が掠めるほどに、ソニックブームで薙ぎ払えるほど低く。
「相棒!」
「よっし!」
 急旋回!
 光の一閃が機体ギリギリを掠めてアラートが綺麗さっぱり。
「おい相棒……まさか……」
「ははは……王者の剣に屠られたなら満足でしょう?」
「やっぱ最悪だお前」
「ですよ、ねえ……」
 もう畜生になんなくたっていいはずなのに。
 で、ジャミング施設は綺麗さっぱり潰されてた模様。護衛機にやる気は……と言うより……。
「キラービーまだー?」
「この状況で待つなーっ!!」
 他の連中が潰し終わってましたよーもー。私達連中叩き落とし用じゃなかったんですかと。
「……傭兵って凄いですね」
 と、ヴィスナの一人が言えば。
「「一緒にすんな!!」」
 クロウ隊の皆様からお声が……て、一人足りません。
「うわー……何時発射タイミング見極めたんすか?」
 あ、PJとかいう元気いいのだけなんか反応違って面白い。
「てきとー」
「……全部終わったら労災請求してやる……」
「ま、そう言わずに、本丸いきますよ」
 帰ってくるのは溜息ばかり。
 ここ、盛り上がるところのはずなんですよ?ねえ。
「全機、エクスキャリバーを攻撃せよ!隣接する発電施設を破壊、レーザー発射口もだ!!」
「砲台はどうしますー?」
「勿論叩きつぶせ」
 とは言ったものの……まーたいるんですよねえここにもスティンガー連中が。
「これはまた熱烈な大歓迎だな」
「あんま嬉しく無いんですがねえ」
 実際問題大問題も良いところなんですよねこれが。
「こちらPJ、列車砲に阻まれて近づけない!」
「こちらヴィスナ3、護衛部隊もかなりやる、正直ホネだぞこれは」
 で、私達はスティンガー部隊の相手で飛び回ってるわけで……よく砲撃くらわないもんですみんな。
 あっちは攻撃しようとする事が出来る分まだいいんですが。
 それでも列車砲からは本体と似たようなレーザーがわんさか。何処のイルミネーションですかこれ。
 まあどのみち手も足も出ないなんて状態これ以上続けたくありませんし……。
「ったく、一番のご指名どっちだと思いますかこれ?」
「自分の胸に手を当てて考えてみやがれ!」
「じゃあちょっと確かめて空いてる方がやるって事で」
 たがいに真逆の方向へ旋回。レーザー予測照準は妖精さん♪
「んじゃ、行きますかー」
 機首を地上に向ける。アラートが五月蠅い。列車砲がこっち向いてる。
 先端がジリジリ青白く光る。
「ガルム1、投下!」
「相棒、上がるな!」
「……へ?」
 ミサイル地上のどっかにぶつかることを祈って低空飛行。
 頭の上を閃光が走る。ひょっとして掠めまし……
「まだ来るぞ!」
「はいぃっ!?」
 時間差で2,3,……本体含めて4連続。
 よく避けられました自分。
「クロウ3投下!なんとかなりそうですよこれは!!」
「列車砲は?」
「ガルム2投下。今さっきお前が一個潰したんだろうが。どうやら電気系統も一部やったみたいだ」
 確かに、列車砲の発射ペースが落ちてる。結構やけっぱちで落とした割にいいとこ当たったみたいで。
 今がチャンスとばかりに一斉投下して……あー、何処に引火したのか花火です花火。
 あ、レーダーがなんか乱れてます。
「上の連中、潰して来ますか」
 せっかく気持ちよく飛べそうなのにジャミングの雑音が五月蠅いんですよ。
 ついでに真上にぶっ放してくれれば周辺が楽できますしー。
 レーダーの乱れ具合から言ってほんとに真上。巻き添えしてくれたら嬉しいんですけどねえ。
 太陽の中にうっすら黒点。今日が晴天でなくて残念でしたね。
 そのまま駆け上がって、失速するに任せて急ターン。
 Gが意識を持ってく。大丈夫、このぐらいならバレルできる。
 ブラックアウトを抜けて最初に聞こえたレーダーロックの音。
 真横を掠める閃光。躊躇うことなくトリガーを引く。
「ガルム1、FOX2!サイファー、発射コールはどうした!?」
「そりゃ失敬」
 中佐、こちとら剣と光をバレルで回ったんですから勘弁してくださいよ。
 復帰した列車砲の一撃もかわして鉛玉を食らわせる。
「コレであと……!」
 光った。最初はやられたのかと思った。
 まだ眩しいのは最後の瞬間がスローで流れてるんだと思ったぐらい。
 でもいつも通りの速度で動く機体の機首ひっくり返したら、今度はホントに真横掠めていった。
 威力はしょぼく……と言うより本気で終わりそうですね。
 あんなにバチバチ言ってる状態でぶっ放したら時間待たずに自滅ですか。
「ヴィスナ2、FOX2。列車は砲は片づいた!」
「よう相棒、奇跡を信じてみんな盛り上がってきたぞ」
「これ奇跡ですかあ?」
「一撃であれは奇跡だろ。ほれ、行くぞ!」
 まあ、実際終わりでしたね。
 発射の度に火を噴く発射口。
 無惨にひび割れた剣。
 ぶら下げてきた爆弾四つ中二つは使ってしまいましたけど、まだ二つ、あと二つ。
 ターゲットを捉えて、よーく狙ってー……。
「こちらクロウ3、砲塔がまだ生きてる!」
「大丈夫!」
 最後の悪あがき。斜め上からしっかり狙う。
 僅かに機動をずらして光を避ける。生死隣り合わせのこの感触、ゾクゾクする。
「ガルム1……投下!」
 ここまでやったらあとは機銃でいけるでしょう。剣の周りをくるっと回って……もう一発。
「攻撃目標の沈黙……確認!ここからでも見える、よくやった!!」
 ありゃ、任務完了ですかね。
 つかE-767の窓って塞いでませんでしたっけ?
「あの剣が抜かれた!やったのはウスティオの一番機!!」
 改めて振り返ると……うわー、本当に真っ二つ。
 歓声の中、がっしゃーんと行きましたねえこれはまた。
「やったぞ、最高のチームワーク!!」
 そう言うことにしておきましょうか。
「サイファー、皆の歓声が聞こえるか?寄せ集め集団の勝利だ!」
 あーあ。さっき最悪呼ばわりしたの誰ですか。
 一機私達の後ろでバレルやってるファルコンはどなたですかなーと?
「全機よくやった!PJ、浮かれすぎて撃墜されるなよ」
「イィィィーヤッホォー!!」
 あーあ……て、ちょっとまった中佐。
「こちらクロウ2、とっくに彼女に撃墜されてんだけどそいつ?」
「ちょ、俺が撃墜したんすよ!」
「や、しつけの悪い犬が狙ってるぞ」
 私ですかい。

「こちら空中管制機ノルト・リヒター。剣は抜かれちゃったみたいね」
「一足遅れ……またこんな状況ですか」
「いらねえよあんなもん。空が狭くなる」
「同感だ。また"誤射"されてはかなわん」
「そう言うな。落ちた先生達拾いに行くと思えば」
「上はタダで返すなとのお達しよ。ファルブロス、グリューン全機へ。剣の代償はきっちり取り立ててきてちょうだい」
「ったく、補充要員が遅いと思ったらこう言うことか」
「ファルブロスリーダーよりAWACS。例の猟犬は?」
「剣抜いて帰っちゃった」
「えーつまんなーい」
「隊長……勘弁してくださいよ」