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ACE COMBAT Zero
The Belkan War
The fate neatly reward it. We only remember the nonpayment we of.
...The UnReward War...

Mission1

 インタビュアーが来たときは焦ったよ。
 ヘタに話すと絶対ばれるからな、お前。
 それに……話したら話したでなあ……。
 ん?自分の胸に手を当てて考えてみろっての。

 小国の割に金持ちらしい。
 それが、ウスティオという国に抱く最初の印象だった。
 こんな山奥の基地だが設備の充実具合といい司令の部屋のコンピュータといい、本当に風前の灯火なのか疑いたくなる。
 ま、それでも待機室がごった返してるってのは何処も変わらないみたいだが。
 金に糸目を付けないのがありがたかった。
 どれぐらい糸目をつけてないかというと、
「よう片羽。久々だな」
 俺に今絡んでる一本縛りの東洋人を雇ってるあたり。
「引退宣言してから何度目だぼったくり」
 シグレ=サオトメ。通称ぼったくりのシグ。腕はいいんだか悪いんだか良くわからん。
 売った恩は倍にして請求するってことでぼったくり呼ばわりされてる。
「しょーがねーじゃん帰れねえんだから」
 それが高じて機体を個人所有してるわけだが、それはそれで苦労が多いらしい。
「で、お前正規軍のぼっちゃんお守り頼まれたんだって?」
「そう言う話、どっから仕入れてくるんだ」
 ……なんだその手の平。
「幾ら出す?」
「出すかっ!!」
 第一なんで司令室の会話コイツが知ってんだ!
「で、ご当人何処にいんの?」
「ん?……ああ、ここで会う予定だったんだが何処で……」
 零そうとした愚痴はサイレンに掻き消された。
「緊急事態発生。全員、至急ブリーフィングルームへ集まるように」
 それにあの副官の無機質な声が続く。
 スピーカー越しだとホントに機械音声みたいだ。
「こりゃお前の相棒とはブリーフィングでご対面か?」
 まったくもって、前途多難。
 じり貧の情勢だ。大方トドメ刺しに来た連中の返り討ちだろ。
 かき集めた傭兵でごった返す部屋。
 真正面に司令官と副官の女が控えていた。
 ……ツィーゲ中尉とかいったかな。
「集まって貰って早々だが緊急出撃だ。手短に行く、ウスティオにトドメを刺しに来た身の程知らずを叩き落として来い。以上だ」
 あーやっぱ……て、おい!
「そんだけ!?」
「あ、滑走路は早い者勝ちだから」
 周辺の温度と湿度が2度下がる。
 我先にと人の塊が一個体の如く出ていったせいだ。
「で、お前の相棒何処にいんの?」
「……知らん」
 空の上でご対面だけは勘弁してくれ。
 何が哀しくてシグとランニングなんだ。
「あ、早速離陸してる連中がいっぞ!」
「そういやお前の姉貴何処いった?」
「ほっときゃ飛んで来るだろ!」
「ごもっとも!」
 ……この場にいられても色々困るし。
 シグと別れて……俺のハンガーは6番だったか。
 入ればすぐに目に付いたイーグル。
 俺のは奥。片羽が赤く塗られていたから、すぐ解る。
 ……例の奴もイーグルドライバーか。
 ったくその当人はどこに……。
「ひょっとして、妖精さんですか?」
 いた。
 コックピットで毛布にくるまってる赤毛の癖毛。
「ピクシーだ。傭兵にゃ挨拶も無しか?」
「すいません、ちょっと迷ってしまいまして」
 で、どうせならってか……シグの姉貴みたいな奴だな。
「そうそう。で、どーせ最終目的地ここだしねー♪」
 その当人がコックピットの真下にいた。
 ……東洋人の女。Tacネームはイング。
 正直シグよりも会いたくない相手だったんだが……。
「あの……慈雨さん、そろそろ行きません?」
 何か横にひ弱そうなのが着いてる。
「そうね。そろそろシグもって……おー。置いてくかー。ほー。行くわよエド!」
「え、わ、首、首しまってまーっ!!」
 弟の離陸を見て相方引きずっていきやがった。
「みんな行っちゃってますねえ」
 こっちはこっちで最悪だったが。
 この年頃でイングに泣かされて無いあたりはただ者じゃないんだろうか。
 何はともあれ、上がった頃に終了は無しにして欲しい。
「おい一番機!名前は?」
「サイファー」
 名乗りを上げる声は、酷く投げやりに聞こえた。

 天には雲が、地には雪が。
 一面の白を突き進む片羽の赤と青の双翼。
「降ってきたな」
 この雪の日が全ての始まりだった。

「寒いのはお嫌いで?」
「や、雪山のベイルアウトは悲惨だ。頼むぜ1番機」
「はーい」
 問題児には違いないが地上に降ろされた理由が見えない。
 その辺も含めて……場合によっちゃ上乗せ請求してやる。
「ったく……お財布握りしめて待ってろよ!」
「方位315、ベルカ爆撃機接近中。各機、迎撃体制を取れ」
「最後尾、見えてきました」
 いるいる同業者がわらわら。
 敵さんの最前列がまだ見えないのが不幸中の幸いか。
 その最後尾飛んでるファルコンに、いや似てるが違う。
 だが黒に銀縁。シグの機体だ。
「よう片羽。まーだチャイムは鳴ってないぜ」
「おい、イングどこ行った?」
「んーまだ合流してねえよ……っと、お前が例のか。こちらクナイ1、よろしくな」
 俺達より先に上がったし、アイツの機体ならとっくに最前列いたっていいはずなんだが……。
「こちらクナイ2。敵爆撃機視認」
 ほんとにいた。
「B-52……なめられたもんだ。消化試合のつもりでいる」
 続いてきたのは一緒にいた男か。
「おい、ありゃ誰だ」
「姉貴も身を固めたって事」
 へえ……て、おい。
「なにーっ!?」
「何処の物好きだ!?」
「各員私語は慎め!!」
「……だから雪降ってんのか」
「あ、なるほど」
 司令塔の言葉なんざ何処吹く風。騒ぐって。
 あの色魔が身を固めるって、大人しい顔してどんな男だったんだ。
「私だけ蚊帳の外でつまんなーい」
 それも、流石に正規軍にまでは知れて無いな。
 通りで一緒にいるのに泣かされてなかったわけだ。
「だったら遊びに行くか」
「はーい」
 旧式爆撃機に護衛機。なるほど、たしかに舐められてる。
 追いついた勢いそのままに最前列へ躍り出る。
 一番槍に立てたのは偶然でも何でもない。
「さーって、正規兵のお手並み拝見と行くかぁ?」
 とっくに噂が広まっていただけだった。
 周りが俺達の突撃に続くのは、悪い気分じゃない。

 そして出だしの悪さが全部チャラになった。

 楽だったんだ。いや、敵はわんさかいたしヘボだったわけでもない。
「敵機撃墜!」
 飛びやすかった。
 敵陣に切り込んで、敵を蹴散らして、アイツが追い込んだ奴が良い位置につく。
 逆もまたしかり。何機か本当に出来る奴も混ざっていたはずだが、お構いなし。
「おい、今日も片羽に全部持っていかれるぞ!」
 よく見てみろ。護衛機食い散らかしてるのは、アイツの方だ。
「おかわり来た見たいですよ」
「あいよ」
 トップスピードは維持。
 燃料が許す限りのハイスピードで駆け抜ける快感なんて、何時以来だった?
 普通のドッグファイトじゃこうはならない。今は背を取り合う必要すらない。
 目の前に居れば叩き落とせる。
 後ろは心配する必要がない。
 獲物は、自分から射程に飛び込んでくる。

 楽だった。思うように飛べた。

「全爆撃機の撃墜を確認」
「こっちも片づい……あれ?」
 俺達爆撃機やったっけ?
「いやーご馳走様〜」
「楽な仕事だったぜ」
「護衛機居ないからそりゃーもう」
「ガルム隊、遊びすぎー」
「こちら司令塔。そう言うわけだ。他からさっ引いて報酬上乗せな」
「え!?」
「おい!」
「上乗せは良いとしてなんで引かれなきゃなんねーっ!!」
 やるねえウスティオ軍も……。
 まあ、肝心のコイツも腕は確からしい。
「お前とならやれそうだ。よろしく頼む」
 この時は、この先に待ってるものなんて、何一つ解っちゃいなかった。
「相棒」

 妖精さん、あの時は結構楽しんでたでしょう?
 ああ。今の俺には、あの日こそが真実に見えるよ。
 この後盛大に幻滅するのに?
 全部、嘘偽りだろ。お前が逃げ込むための。

「……あの程度ですか」
 思ったより楽でした。あの時みたいな連中が来るとばっかり思ってたのに。
 あっさり落とせるし妖精さん腕良いし……馬鹿みたい。
 で、その妖精さん。ただいまハンガー内部。
 私の右斜め前方で、カルピスのコップを割れんばかりの握力で握りながら突っ伏していたりして。
「これ……原液?」
「いえ4:1で薄めましたけど」
「……比率が逆だ」
 気付かず一気飲みする方もどうかと思いますけどねえ。
 みんなこの濃度駄目なんですよねえ……何ででしょうか。
 まあ引っかかるのは今回だけでしょうけど。
「くっくっくっくっくー」
「お前なー……このっ!」
 あ、取られ……。
ごっくん。
 あー……。
ばたん。
 倒れた。
「あのー……?」
「……お、お前、糖尿病で死ぬぞ……」
「勝手に人の分取っちゃう方が悪いですってば」
「テメエで飲むなんて誰が考える誰が……うー……気持ち悪……う゛っ」
 あ、お手洗い直行。
 ……これは暫く出てきませんか。
 しかしまあ、困った話になったものです。
 生き残ることなんて、これっぽちも考えて居なかったっていうのに。
 ダメかなと思ったこの場所も、何事も無かったように無事。
 雪が酷くなって、滑走路を除雪車が右往左往。
「本当に戦況、ひっくり返しちゃうのかな……」
 もうそんなのどうでもいいのに。
 そんなの……。
「?」
 視線。気配。妖精さんは胃でもやられたのかまだ。
 ……外?

 降りしきる雪の中、子供が居た。
 サイズの合わないコートを羽織った東洋人の少年。
 一応ここは軍事基地で、さっきまで爆撃の危機にあった場所に、ただ一人。
 感情を映さないセピア色の目。微動だにせず、ただこっちを見上げていた。
 現実味というものが、そこだけ切り取られていた。
『あの……』
「え、ああ」
 異国語の呼びかけ。
『えっと……』
『大丈夫ですよ』
 まさかこんな所で役に立つなんて。
 表情が、少し変わった。
『7番ハンガー……』
『すぐ隣』
『ありがと』
 引きずられたコートが、まだ柔らかい雪をなだらかにしていく。
「どうした?」
 あ、現実の世界からお迎え。
「本物に会いましたよ、妖精さん」
「ほー……」
 誰かの身内なんですかね。
 こればかりは、蚊帳の外で構いませんけど。

「で、部屋まで一緒ですか……一昨日まで1人で使ってたので少々汚いですけど」
「なに、こんな稼業やってりゃ二人部屋でも良い待遇だ」
 待遇……ねえ。司令も言ってくれれば掃除ぐらいしたのに。
 まあ、歴戦の強者があの部屋をどう見るのか……面白そうではありますが。
「……」
 あ、固まった。
「局地戦でもやったのか……?」
「ええ、1人相撲をちょっと」
 あれから3日の間にベッド以外の物は大抵壊しましたからねえ……。

 血の跡ぐらいは拭っておくべきでしたか。