ACE
COMBAT Zero
The Belkan
War
The fate neatly
reward it. We only remember the nonpayment we of.
...The UnReward
War...
Blank1-旅立-
アタシ?ああ、うん。一緒だったよ、最初から。
え?嫌だねえ。そんな良い理由じゃないよ。
ただ、自分の為。
アンタ?ここでくたばってみてもいいのよ?
……戦争が終わった。そう。一応は。だけど……。
「アデーレ、大丈夫?」
「……うん」
無くしたものはあまりにも大きい。大きすぎた。
そして、何よりも大きかったのは、その喪失を自覚できない自分自身。
故郷だった。友達が居た。幼なじみがいた。
男の癖に、歌うのが好きだった変な奴がいた。
少し、好きだったかもしれない。
「何でよ……」
もっと嘆くと思ってた。もっと苦しむと思ってた。
もっと、苦しんで、嘆いて、それこそさ……。
「アイツが、ショッキングすぎる演出を喰らっただけだったのかな……」
私は、その光景を見ていない。
お父さんや、バルトさん、あの子も……みんなあそこにいたのかな……。
……ねえ、ティルラおばさん大丈夫?……
……それがね、実はね……
……?……
……弟か妹が生まれるんだって!……
……え、ほんと!?……
……うん!……
6月は、さすがに暖かい……なんだろうねえ……。
ねぇ……サンズ……どうすればいいと思う……
「ねえ……」
「あ、起きました」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!?」
ぶん殴ってやったわ、シエロの奴。
コイツ、私に膝枕してやがってた。
「……メディックが怪我人を増やしてどうするんですか」
そして中尉に怒られる。
殴ったとき派手な音立てたせいか傭兵連中や子供達まで寄ってきてあたしらとんださらし者。
「どしたの?」
「……痴話喧嘩かー?」
一緒に正座してるシエロは次男坊に氷嚢を当てて貰っているが。
最近の中尉、口調は静かだけど、その分余計に恐い。おっかない。
ここ最近……あの日から不機嫌らしいのは、既に暗黙の了解となっていた。
鈍い男達以外には。
そして間の悪い人間というのはいるもので……。
「フリーダ中尉、最近不機嫌だよなー」
鈍い男代表格、クロウ2がいたりする。横にいるのは末っ子とクロウ1。
クロウ1はクロウ1で、その鈍さで整備班の一人を泣かせたりしてるんだが。
そんなだからパト公に出し抜かれるんだよ。
……明らかに、中尉の視線がそちらに注がれてるわけで……。
「ひょっとして二日目だ……」
歩を進める体が、軽く跳ねて、
「がはっ!!」
ハイキックが綺麗に入る。
「わー!リッチ!しっかりしろリィーッチ!!」
「い……い……」
クロウ2、脱落。同時にその横にいた末っ子が一言。
「イチゴ」
言った。流暢なベルカ語で、確かに言った。
「ねえシエロ、末っ子って」
「れっきとしたバイリンガル」
さっき喰らわせたのはハイキック。
末っ子が居たのはその真正面のクロウ2の真横。
イチゴが見えそうな場所と言ったら……。
気付いた連中の視線が、中尉のスカートに一点集中。
あたしがシエロと一緒に部屋から退避している間、その部屋がちょっとした惨劇の場になった。
子供達には良い娯楽。
「うわあ……」
「ストロベリーの惨劇、と」
「で、何処に行かれるのですか?シルヴァンス少佐」
「んぎゃーっ!」
中尉が用があるっつったらコイツしかいなかったーっ!
脱兎の如く逃げるエース。それに対し、中尉はさも慌てる様子も無く……。
『各員、目標捕獲!』
『いえっさー!』
「フリーダさん……コレはずるい……」」
背後から飛び出した小さな護衛兵達があっさり目標捕獲。
そのまま中尉に引きずられてお持ち帰り。
長男がしっかり進行方向で待ち伏せてたあたりがまあ……えげつないっつーか。
「アンタ達、最近シエロに冷たくない?」
「僕達じゃ、空までついてこれないから……」
「そう……」
この子達は、どう思ってるのかな。
見知った人が、見知らぬ所で死んじゃうかもしれないのを……。
まあ……見つけられなくて良かったのかもしれません。
あんな結末で、お前は妥協したってのか?
いえだってね、あの時に連れ戻せていましたらですねえ、ふふふ。
妖精さんも、松葉杖仲間にされてたかもしれませんよ?
戦争は終わった。それが全ての終わりじゃないことは、皆承知していた。
「一体何をしでかしたんですか」
これからが本当の戦争だって人もいる。
彼女も、私も、その一人に入っている。
「いえね、パト君の彼女……シンシアさんでしたっけ、頼まれてしまいまして」
「……体を張りましたね」
「私に、何をしろっていうんですかねえ……」
でも、放ってもおけない。そんな状態でした……。
司令室のソファにぞんざいにほっぽりなげられ、ちょっと堅いところにごっつん。
「では。私はこれで」
「ああ、行っておいで」
そしてそのまま、フリーダさん退室。
副官という割に……案外別々に居ることの方が多いんですが……。
「彼女、何処に行くんです?」
「彼の死亡通知。自分で行くと言い出してね……ほれ、渋ると後が恐いから」
「さっき何人か恐い目に遭わせてました」
「大丈夫。私より酷い目にあったのはいないから」
「何やったんです?」
「セクハラ♪」
……最強がいる。
「しかしフリーダさんがねえ……妖精さんもいつひっかけたんだか」
「気を揉むタネが共通してたんだろう?」
「やっぱりそうですか」
私完璧に子供扱い。
まずやるべき事は、妖精さんを初め、行方不明になった兵士達の捜索。
全く当てもなく、なのに規模は大きい。個人には途方も無い話だったんですが……。
「んでね、コレとコレとコレが、私の名前で動く奴。こっちは今根回し中」
この司令官、ノリノリである。
「いつの間にこんなコネを……」
「ああ。私の親父。随分えげつない事やってたらしいから。と、コレが君のファン」
私が直に交渉しにいくわけにも行かないって言うのに……。
交渉に行くのは司令でしょうが。
「で、シグはシグでつてを使って調べて貰っているわけだが……君はどうするね、少佐?」
「……」
私に、何が出来るだろうか。
「組織なんてデカブツじゃ、細かい隙間までは調べられないもんでね」
私が知っている、妖精さん……。
「キラービー……」
不可逆的なものではないはずだ。
「で、そっちから片羽を探すんだ」
「ええ。あれだけの無茶をやった連中です。知られていないとは思えません」
シグさんは傭兵達繋がりから。
「オーシアにも、面白いのがいたからな。挨拶がてらだ」
私は……。
「こっちは、鬼神の名前で動きそうなのを当たってみるつもりです」
「……危険、じゃねえの?」
「つてが一つ、それが当たりと信じるしか無いでしょう」
一人で行くつもりだった。
『……』
「ちゃんと、帰ってきますから、ね?」
−君達は殺されそうになったとき、自分を見捨てていいと言えるかね?−
子供達を連れていけるはずはない。
思ったより素直に聞き入れてくれた。だけど、その代わりに……。
「サイファーのことは、まかせてとけ!」
クロウ隊とパト君がついてきました。
「……どーしても来るんですか?」
「子供達が来れない所には、俺が行くって約束しちゃいましたから」
−その結果、彼がおっかない鬼になってもいいのかね?−
「それに、俺達が駄目な理由は無いと思うんすけどねえ」
そして、なんとも心強い旅の道連れはもう一人。
「アタシも、準備できたよ」
「……ええ」
彼女は……断りようが無かった。その故郷が、今どうなっているのか。
直接聞いたわけじゃない。情報源は、私の、なんとなく。
だけど……そこは、もう……。
「アタシの親父も、ちょっとしたもんだったんだから」
「頼りにしてますよ」
ベルカ空軍パイロットの娘が軍にって、やっぱザルだわウスティオ。
「行ってらっしゃーい!」
「ゆっくりしていってねー」
『……ハネムーンベイビー』
「なあPJ、俺達邪魔じゃね?」
「そうですねえ」
「マテこるぁーっ!!」
最初に尋ねたのは、あの日を一緒に飛んだ人達。
ベルカの空に一番近い人達だったんですが……。
「何だ。拿捕した捕虜に結婚報告か」
「真面目なお話をしに来ましたー」
……何でみんなくっつけたがるんですかー。
せっかく窮屈な士官服着込んで、階級章もしっかりつけて来たのに。
捕虜とか言いつつ結構良い部屋を当てられてるのは、私の客人だからってことですかね。
……ソファで足を組んでる捕虜と、テーブルで手を組む士官ですか。
「すまんね。意外と正装が似合っていたものだったから」
私、一応正規兵だったんですがねぇ……。
「で、何のようかな。少佐殿?」
話した。妖精さんが居なくなったときの事。
同時に起こった部隊の大量失踪の事、そして……。
「仇敵に会って、どうするつもりなんだ」
キラービーの事。
「偶然ですよ。仇敵が、偶然相棒と接触していた。それだけです」
「……恨み言抜き、か?」
「当然」
そう。私はいい。私はもういい。だけど……。
「聞かれる側は?」
私が、築いてきた分がある。私が、残してきた分がある。
「……覚悟は……」
私が、積み上げてきた憎しみがある。
私が、背負うべき物がある場所。
「……」
手が、震えてる。
「みんな……少し外に」
一体、いつからなのか、何となく解っている。
人を下げたのは……恐かったからだ。自分の、弱みが。
「どうなんだ、鬼神?」
「……出来ていると言えば、嘘になる」
「そんな半端考えだと、死ぬぞ?」
「それでも、行かないと、いけないんです」
私のせいだから。
「自分の顔、鏡で見てみろ」
「真っ青でしょう?」
血の気が引いてるのは、自分でも解る。
「良いから見てみろ」
言われるまま見た鏡台には、予想通りの顔が映っていた。
「それでも行くんだな」
「……私が、置き去りにしたから」
行かなきゃいけなかった。
「あんなのは、私だけでいいから」
連れ戻すために、歩かなければいけなかった。
「一晩くれ」
「……すぐは、無理ですか?」
「お前を死なせない道を吟味しないとな」
あんたって、何時親父達に会ったの?
そう。じゃあ、丁度入れ違いになってたんだ。
ああ、アタシの親父?
うん、ほれ、堅物の白髪いたでしょ。それ。
ここまででかい我が儘を言ったのは、何時以来だったかな。
−このままここで待ってたくないの!!−
なんにも言わずに、OKを出してくれたのは有り難かったんだけどね。
交渉の結果は、上々だった。
シエロの顔色が白くなってる以外は。
「……アデーレさん、行ってきていいですよ。遅くなったら、余計悪いですから」
「ん」
そのままベッドに突っ伏したから、多分このままオネンネなんだろうね。
「今、いいですか?」
「ん、何か?」
何処の隊の人なんだろう。
10年前の、幼少期の記憶は、思ったほど宛にならない。
「私も、ベルカで人を捜してるんです」
「……ほう?」
「ファルブロスって部隊、ご存じ在りませんか?」
その人の眉が、かたっぽだけ吊り上がる。
やっぱ暴れてたのかなあ……バルトさん達。
「会ってどうするんだ?」
「……父、なんです。その隊の二番機……元がつくかもしんないけど」
「証明できるものは?」
「一応写真持ってきた。かなり古いけど……」
そう言って見せた写真は、家族写真と言うには少々でかいもんだった。
家族写真と言うより、部隊写真+家族みたいなもんだから、アタシの姿なんてちっさいちっさい。
これで、特定できるのか少々不安だったんだけど……。
「君、さっきの話聞いてたか?」
「え?」
「鬼神の尋ね人、この男だ」
そう言って指さしたのは、親父の横、ベージュの髪した子供を担いだ、黒髪の人。
「……バルトさん……」
信じられなかった。
いや、私がそこまで知っているわけじゃないけど……。
「指揮系統、士気の柱、そう言うのを、一刺しで葬るのが由来だよ」
「アイツは、それに……」
「値した。そして唯一落とし損ねた相手だった」
結局、一緒に行けば、いつかブチ当たる。
それが答えだった。
「アタシ、わざわざ聞きに来るまでもなかったのかねえ」
「いや、そうでもないさ。あの子、守ってやりなよ」
「アタシが?」
「君にしか、出来ない」
「……はい」
最後の一言は、自分の胸に、手を当てながら。
すっかり暗くなってしまった基地の外にシエロがいた。
「何やってんの?」
「さすがに、夜はまだ寒いですから」
片手にはジャケット。士官服はそのままでライトに照らされてると、なるほど様になってるねえ。
「……ありがと」
だけどさ、言い出せなかったね。
アンタの仇が、アタシの幼なじみの親父でした、なんてさ。